大型ICOとして注目されているバンクエラ。その概要を分析してみました。そして、買ってみました。
Contents
概要
今回のICOに必要なものは、
・販売窓口であるスペクトロコインに口座を開設する
・NANO Wallet(ナノウォレット)を準備する(トークンの受取用ウォレット)
・NEMを取り扱っている取引所に口座を開設する
・取引通貨であるNEMを購入する
・取引所からNEMを直接スペクトロコインに送金する
・スぺクトロコインにて、バンクエラトークンを購入する
・スペクトロコインにて、バンクエラトークンをICO終了まで保有する
・毎週配当が配布される
というようなところでしょうか。
今回は、ビットコインやイーサリアムでも買えますが、レートが高いのと、やはり値動きが激しいのでこちらでの購入は回避しました。
購入プロセス上の注意点
やはり、仮想通貨がネックです。執筆時点(2018年2月上旬)のイーサリアムは上昇基調で買う気がまったくおきません。かわりに下降基調のネムでも買えることから、こちらの手段を通じてやってみようと思い、わたしはネム建てでバンクエラを買ってみました。
ネムをザイフで購入
↓
ザイフから直接スペクトロコインの自分の口座に送金
↓
スぺクトロコイン内にて、バンクエラに交換
レントベリーのときは、イーサリアム建てだったので、オウンゴックス対策もあっていちどイーサウォレットに出してから販売プラットフォームに送金しましたが、送金手数料を取られたので手数料の二重取りが発生し、かなりいやな思いをしました。今回は取引所から直接送金にチャレンジ。たくさんの「着金できません」レポートも知ってましたが、
・送金時に表示されるメッセージをそのままコピペ
・そのメッセージを暗号化しない(っていうか、その方法がワカラナイ
というネム独特の送金時のクセがわかってれば行くだろ、と思いやってみたら成功しました。
ただ、バンクエラは、1BNK=0.017EURと法定通貨で価格が設定されているので、下落基調の仮想通貨でも、すぐに交換するなら、ほぼ想定した価格で買えるのだな、という体験をしました。1BNK=0.01イーサなんて設定よりも大変意義あることで、これは結構大きなことです。
バンクエラを分析している人たちのサイトを勝手に分析してみた。
評価されているポイントは、以下のところ。
・その事業がすでに進行していること自体に評価
・配当が毎週もらえる
・メンバーのアドバイザーにネム財団の人がいる
の3つが主なものです。ブロックチェーンのすばらしさや事業アイデアのおもしろさ、身近に感じる不便を解消してくれる期待感など微塵もありません(笑)。「みんながすごいと言ってるからいいんじゃね?」なノリです。まあ、しょうがない、バウンティ目当ての記事はこうなりますw
レーティング各社の勝手なレーティング具合はどうか
BB(7/11)→AA(10/11) ICO bazaar https://icobazaar.com/v2/bankera
60%/100% GLOBALHALO https://globalhalo.com/
7.3/10.0 ICO marks https://icomarks.com/ico/bankera
2.6/5.0 ICO RATING https://icorating.com/ico/bankera/
2.9/5.0 CRYPTRATED https://cryptorated.com/ico-reviews/bankera/
3.4/5.0 ICObench https://icobench.com/ico/bankera
「中の下」と「高評価」の両極端に分かれているような流れです。
タフな意見一覧
“the fact that pre-sale investors bought in 25 million Euros worth of tokens at a hefty 70% discount means that there will likely be nothing but consistent selling pressure of the BNK tokens. Avoid this ICO.”
by GLOBALHALO
ICOの内容
BNK総発行数により、売り出し価格が上昇していきます。
発行数 1BNK
0 – 10億 0.017EUR
10億1 – 20億 0.018EUR
20億11 – 30億 0.019EUR
30億11 – 40億 0.020EUR
40億11 – 50億 0.021EUR ← 2/24現在ここ
50億11 – 60億 0.022EUR
60億11 – 70億 0.023EUR
70億11 – 75億 0.024EUR
分配
10% プレセール
30% ICO
30% SCO
25% 従業員&経営者
05% アドバイザリー、バウンティも?
ICO総額は1.77億ユーロ、SCO予定は7.5億ユーロ
100億円の大台は達成したものの、目指す配布数には遠く及ばない状況です。仮想通貨市場の需給バランスからいえば、相当がんばっているほうではないでしょうか。
とはいえ、9万人をすでに超える参加者で130億円を独自に調達しているので、大規模ICOにかわりはありません。
9万人というカウント方法ですが、1購入回を1人と計算していたら、何回かに分けて買っている人の割引分が発生します。わたしですら2回に分けて買っているので、このカウント法だと想定すると、実際は半分くらいしか参加者がいないのかもしれません。
バンクエラはスペクトロコインのハードフォークで生まれた金融機能強化型
スペクトロコインという仮想通貨プラットフォームに銀行的要素を追加したくなったことから、バンクエラを作るという、仮想通貨的に言えば「フォークを行った」新しい事業を生み出したといえます。
フォークした図
ホワイトペーパーからの抜粋では、以下のようなことが目的
決済カードの発行体になることで、IBANコードやデビットカード、決済代行サービスなどの従来の支払方法を取り入れるだけでなく、他の金融市場のための中継銀行として送金サービスを行うなど様々な支払サービスを提供できるようになりたい
複数の国で銀行ライセンス取得を目指す。多数のライセンスを所持することで国境を超えたクロスボーダー取引を即時に可能にするだけでなく、複数の管轄区域における金融市場へのアクセスすることによって低い為替レートが提供することができる
本格的なデジタル銀行になることを目指す
ビットコイン(Bitcoin)やダッシュ(DASH)、ERC20トークンを含むイーサリアム(Ethereum)、ゼム(XEM)などほとんどの仮想通貨を取り扱い、それらが備える決済機能を活用します。バンクエラの顧客はこれらの通貨を貯金または取引をすることができるようになるだけでなく、支払カードの口座管理をすることで既存の通貨と同じようにこれらの仮想通貨を使うことができるようになります。また、現在スペクトロコイン(SpectroCoin)で提供されているように、これら全ての通貨に対応した決済代行サービスを事業者に提供したい
AIを活用した投資ソリューションメニューを今後は個人・法人客に提供を企画。投資銀行も目指す
収益の柱は
1.支払い
2.ローン&預金
3.投資
で、ロードマップでは上記に振った番号順にアップデートしていく予定
ブロックチェーンとの関連性
Cryptoratedの診断では2.4/5.0と、あまり高くないように、ブロックチェーンが金融プロセスのどこで特に機能するか、という説明が足らないようにも思います。
バスケット開発を将来は想定しているようですが、支払い機能が高い率で稼げるようになると、はたしてそこに行くのか、という疑問もあります。まあ、それでは世界銀行を目指せませんがw
支払いサービス&預金
(これは、収益基盤を早期確立するのと、融資用資金の種銭の増強を目的?)
↓
銀行業務開始(利息支払い&法人向けローン提供)
↓
ETF提供開始(投資銀行業務に)
↓
バスケット開発(=新しい貨幣の創造)
勝手な分析
バンクエラの将来性分析記事が、意外とないのには驚きます。日本国内のアフィリエイト記事を読んでみても、「実際の業務をしているので安心」程度のものが多く、まったく参考にならなかったです。
ホワイトペーパーとロードマップを見るに、収益の柱を(1)支払い、(2)ローン&預金、(3)投資、とリストしていて、銀行業務のすべてを網羅するなんでも屋になるのか、と心配しますが、ロードマップでの成立順は番号を振った順なので、すぐに高収益体制を作る妥当な線である、と思えます。
支払い機能は潤沢になる
通貨の交換所としての機能があるので、手数料収入という点では一番のドル箱でしょう。それを法定通貨・仮想通貨と両方に拡大していくのですが、仮想通貨と法定通貨をまたいだ両替を認めない、というような中央銀行をもった国が複数あるのも事実です。この課題をどうシステム上乗り越えるのか、という課題は出てきます。
預金、ローンは苦戦すると思う
これは、自己資本比率を高め、規模の経済を目指さない限り、突出した存在にはなれない。仮にSCOを実施して7.5億ユーロ(約800億円)を追加調達したとしても、静岡銀行くらいの大きさにしかならないです(資本金908億円預金9兆円)。みずほ銀行(資本金1兆4000億円)に遠く及ばないし、みずほ銀行でも世界規模では22位(2016年世界銀行ランキング)。相当うまくM&Aを繰り返さないと、このスキームは思わぬところで別の銀行から買収されてしまうかもしれません。
しかし規模拡大は使命になると思うので、どっちにしろSCOを実施することは必至だと思います。
となると、3番目に控えるETFの販売と、支払い力強化でどちらかというと証券会社のような収益構造を維持しながら成長戦略を描いていくことになるのではないか、と勝手に思います。
これは、楽天証券と楽天銀行が進めている戦略にかなり近くなるかもしれないですね。
リトアニアの国情からバンクエラは応援されるだろう
本社はリトアニアなので、リトアニアの経済状況を調べてみました。
経済成長率は2.3%
バルト三国との足並みがあり、ユーロ加盟で通貨はユーロ建て。ロシア統治時代、バルト三国で産業が分担されていて、エストニアのIT関連、ラトビアの自動車・造船産業、リトアニアが電子産業という分担だった。エネルギー依存率はロシア90%で、ウクライナ情勢のとき、加盟していたユーロ圏の反発により経済供給が悪化し、2015年は経済が下降してしまう。失業率が8%近い。
小国でロシアの再侵攻の可能性があるが、ロシア時代の遺産をうまく活用してエストニアがIT大国に成長したのにいい影響を受けている。貿易は日本に似て加工型で、国の将来としては重産業振興というよりも、IT系を中心とした金融立国をめざすのか?というところです。
ただ、いろいろなリトアニアレポートを見ていると、稼ぐために国外に脱出する人が後を絶たず、にっちもさっちもいかない国であることは確か。その中で起死回生の策を取るとすると何になるのか、と言えば、低コストで確立したインターネット環境をフルスロットルで活用し、EU経済圏を徹底的に利用し、おいしいところをピンハネしていくしかないのかな、と思わざるを得ない。近隣ではアイルランドやアイスランドがモデルとして挙げられるので(ただし、リトアニアにとっては異民族)、このパターンをたどるとしたら、バンクエラはもしかしたら国のバックアップを勝ち取る企業になるかな、とも思える。
HitBTCに上場が決定(2018年2月22日現在)
ICOの登竜門みたいになってきた、HitBTCに上場が決定したようです。中国リスクはないものの、手数料が高くて(特に引出し)あまり評判がよくないようですが。。
実はターゲットプライスを設定している?
SCOを発動する条件として、運営側が述べているのが「10ユーロセントに達したら」としています。現在のICO価格の5倍近くの値段です。この価格根拠がわからないですが、ひとまず運営側から具体的なターゲットプライス論ともとれる価格が出ていることは確かです。
いったん利益を確定したい投資家は、基本的にこの価格帯に売り板を出すことでしょう。
タフな意見を並べてみる
ここからは、かなり厳しい意見を並べてみます。
配当を出していることが、有価証券とみなされる懸念
配当型トークンに対して、世界の金融当局の見解は一様に有価証券扱いとする、という流れになりつつあります。配当が現金であるケースはほぼ確実みたい。対して、仮想通貨や同じトークンの再分配というような現物支給型のケースは、監視当局によってまちまちの対応です。
有価証券とみなされるメリットとデメリットは何か、というと、経営者目線では、投票権が付与されるので、経営に口出しされる心配が出てきます。また、当然ですが仮想通貨から有価証券への「仕様変更」は相当のめんどくさいことになります。仮想通貨として購入した投資家から「話が違う」と訴訟沙汰になるリスクも追うことになります。投資家目線では、有価証券化は経営への発言権が与えられるのと同時に、有価証券取引でのいろいろな投資家保護を受けられるメリットも考えられます。
で、バンクエラも、この懸念にひっかかるのでは、と、リトアニア中央銀行から調査を受けました。
Lithuania’s Central Bank Probes 100 Million Euro ICO
https://www.coindesk.com/lithuanias-central-bank-probes-100-million-euro-ico/
主題はリトアニア国内での過剰な宣伝に対する調査でしたが、概要を把握した上での牽制、みたいなところもあったのかも、という点では投資家としては注意していかなければいけないトピックです。
配当政策が需給を左右するという懸念
初期のICOでは、「たくさん配当をもらった」という触れ込みでアフィリエイト記事が乱立しています。利率(年率)を計算すると、6〜9%くらいでしたが、参加者が増えた2月中旬以降は年率1%程度に収まりつつあります。収益の20%を参加数と参加比率で割って分配するので、まあ当然の流れです。事業規模の拡大に伴って配当額も上向くことが期待できますが、配当はICO期間中まで、という発言もあり、ICO終了後はどうなるかわかりません。
2、3%の配当を維持するようなら、これ目当てで長期ホールドする人が多くなるかもしれませんが、打ち切りの場合には売却する人が増加するのではないか、と市場での需給懸念に繋がります(供給過剰で評価額上がりにくくなる)。
また9万人もの投資家が参加していて、かつ50億のトークンを配布済みなので、「20%の収益分配」が将来的に経営の大きな負担になることが予想されます。純益の20%が投資家に行くというのは、株式市場の視点で見てみるとやりすぎです。SCO実施や、上場後の値上がり益が期待できる水準に達した時点でこの制度は改悪されるとみていい気がします。
ホワイトペーパーの域を出ない対応
これがいいことか悪いことかはわかりませんが、フォーラムなどで上場方針や、そもそもの決算書・キャッシュ・フロー計算書の開示要求などに対して、運営はごまかすかのような姿勢が多いと印象を受けました。
テレグラム、フォーラム、ブログ、ツイッター、FB、さらにそれらすべてを日本語対応と、ICOにしては手厚いサポート体制、情報発信体制を築いていますが、ホワイトペーパーの先にある経営方針の確認など、もう一歩知りたいことを聞くと、そのスレッドは鉄のカーテンに閉ざされます。
改めて、リトアニア銀行の介入
今回の調査は、マーケティグに対する調査だったようですが、報道に載ったことでコンプライアンスコントロールが慎重に求められる状況になったと思います。銀行業務ですので、ほかの業態のスタートアップよりもこの部分は徹底してもらわないと困ります。
が、フォーラムなどSNSでの運営の対応は、自分たちに都合のいいことに対しては細かく対応してくるが都合の悪いことには誠意を持って向き合わない姿勢が目立った印象をわたしは持ちました。
これを「コンプライアンス不足」と、もっと頭の固い人たちが見たらどうとるか。
仮想通貨は分散型を志向しているので、中央集権からとやかく言われる筋合いはない、と仮想通貨支持者は口を揃えますが、口出しをされないためには中央集権者たち以上に厳しいルールを敷いて強力な自浄作用・自己改定力があることがあってこそ成り立つのでは、と思います。その観点からみると、SNSでの運営の対応は残念ながら落第点であり、そこを中央銀行や政府がついて来る危機はあると思いました。
上場市場がないのでは?→これは解消される
22日未明にHitBTCに上場が発表されたので、ひとまず独自上場は達成しています。これがだめでもバンクエラは独自の交換所を作る、という構想はあるので、そもそも買ったトークンを換金することができなくなる、という事態は避けられました。
しかし、HitBTCが50億トークンもの流通量を想定しているかどうかは疑わしく、これに対応できる別の上場を求めたいところですが、バンクエラは独自取引所の開設を目的としているので、これ以上の上場は期待できないかもしれません。バンクエラだけを頻繁に取引できる取引所として成立するかもしれないからです。が、それは閉鎖性を意味するので、需給の展望としては暗いような気がします。
で、結局買うのか?っていうか、買ってしまったw
ネムで2回に分けて買いました。仮想通貨の値動き変動リスクは、1BNK=0.017EURという法定通貨建てだったので、すぐに換金すれば問題はなかったです。
ただ、ユーロベースでの価格設定。ネムを買ってすぐにBNKを交換すれば、この下落リスクはほとんど関係なかったです。
分析ではどちらかというと否定的なことが多いですが、経営の基本方針は収益をしっかり取る組み立てをしているように見えますし、銀行免許も南国のものですがいちおう取得し、第1関門はクリアしているとみました。
なによりも130億円の調達は、「経営に口出しする権利のない投票」なので、コンプライアンスなどで締め上げられるのは外的要因のみです。銀行は「いい人」でないと成立しない業態ですので、このあたりは外圧で修正させられると思いました。ですので、決算書の開示を請求しても応じない場合には、わたしはリトアニア中央銀行に「こういう銀行あるんだけどー」と問い合わせをしますw
次はICO終了後、へんなことを言い出さないか、が関門です。それをクリアすると、上場で実際にどのくらいの流動性が出るのか、売りが強くならないのか、というところも最大の関心事になります。
なんだかんだで心配事の多いICOです。
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